糸巻きの聖母がくる「レオナルド・ダ・ヴィンチ天才の挑戦」
来年1月からの江戸東京博物館の企画展「レオナルド・ダ・ヴィンチ 天才の挑戦」に「糸巻きのマリア」という珍しい作品が、アジア地域には初めてとして展示されるとニュースで賑わっています。
他者との合作説あり、とはいえルネサンス期の工房では普通
wikipediaには、「糸巻きの聖母に他者との合作説あり」、とか誰が言ったか謎のように書かれてますが、そもそもレオナルドが才能を認められたのは、工房の師匠だったヴェロッキオとの合作「キリストの洗礼」だったわけだし、大して重要ではないと思われます。
今回の、糸巻きの聖母(糸車の聖母とも糸巻きのマリアとも言われてる=バクルーの聖母(バクルー公爵家所蔵))
(こっちは「ランズダウンの聖母」、どっちもダヴィンチ作)
(キリストの洗礼で、ヴェロッキオが描いた作品の主役であるイエスとヨハネよか、ダビンチが描いた脇役の双子の天使のほうが評論家の評価が高くて、ヴェロッキオがもう絵を描くのやめたという実話でダビンチの才能が世間に知られたそうです)
ダヴィンチ・ミケランジェロ・ラファエロが活躍したルネサンス期の美術は、キリスト教を広めるため教会が有名芸術家の工房に作品を発注し、社長である彼らは今の漫画家さんみたく弟子を沢山雇って注文を捌かなければならなかったわけです。
中でも、ラファエロは一番若かったのに大工房を経営していたようで、今でいうさいとうたかおプロダクションみたいな感じだったんじゃないでしょうか?
合作でも何でも、レオナルド・ダ・ヴィンチ本人の作ですし、日本初上陸ということだから、これはすごい集客になるでしょう。
アイルワースのモナリザ(美人の方のモナリザ)が、ヴァザーリ説やラファエロのスケッチからもダビンチの真作に間違いなく、あらゆる調査でルーブルのモナリザの初期バージョンと断定されたのが一昨年辺りだったか?
その前の年にアイルワースのモナリザは日本(静岡県静岡市美術館)に来てたのに、真作で貴重さというか重大な作品であるとの評価は高まる一方で、この先はもう日本に来なさそうな気がします。
今回の糸巻きのマリアも、両国の企画展以降はイギリスに戻っちゃうわけなので、ぜひ見に行きたいと思います。終日めちゃくちゃ混むでしょうけど。
美術館の美術作品との距離、ルーブル美術館とか
ところで海外の美術館は、絵画との距離が近い。その気になれば触れてしまう。
(↓これは、毎日新聞さんのダヴィンチ・糸巻きの聖母についての報道に使われてた写真)
(めちゃ間近でガン見できます)
この点、日本の美術館は賠償責任に対する担保で、作品との距離が遠すぎて寂しい面もあります。もう少し客を信用してくれというか・・・。本気で作品を壊そうとする奴は、捕まる覚悟でハンマーもって来るでしょうし。
お寺に油まいた金山昌秀とかいう在日韓国人宗教家の行動を見れば、文化財や美術品を貶めようとするストレスを持った奴は、小心者で絶対ばれないはずの人里離れた場所を狙ってコソコソ動く、というのが分ります。
美術館の美術品は衆人環視という最強のバリアに守られているわけなので、もうすこし近くで見せてくれてもいいじゃんといつも思います。
ルーブルのモナリザ(オバちゃん顔のほう)は、実際にパリ観光で観たことありますが、丸きり筆の跡の見当たらないスフマート技法は日本の美術館の距離では見れなかったなと思います。
ある意味、CGで作り上げたように肌の感じが細かく滑らかで、モナリザのルックスはともかく、ダヴィンチが一生描き続けたその「入魂」感には、間近で観るとほんとに酔いしれました。
糸巻きの聖母のイエスの髪型
しかしながら、この糸巻きの聖母のイエスの髪型のリーゼント。ダヴィンチもラファエロもボッティチェリも・・・ルネサンス画家の誰一人、イエスにもマリアにも会ったことあるはずないわけで、写真も残ってるわけない。
とりあえず、誰かが描いたのに似た感じにしとけば無難かな、ということでこの頃の赤子イエスはリーゼント多いです。ダヴィンチは糸車のマリアを1499年以降に描いたそう。その10年位前にジョヴァンニベリーニが「双樹の聖母」でリーゼントイエス。
(同じベリーニ作のマリアとイエス。っ首絞められてます)
糸車の聖母の謎といわれる部分
糸車の聖母の謎と言われてるところ。合作なんじゃないの、というのの他に、マリアの顔がダヴィンチらしくないっていうのは、他の作品のマリアを見れば、全員、顔が違ってるっていうのは一目瞭然なので、これは「謎」じゃないでしょう。
ちなみに当時の画家は、キリスト教系のクライアントに頼まれて、同じようなモチーフばっかり描いてるから、作品の人物に知り合いを密かに登場させたりしています。
ラファエロ作「アテネの学堂」。ヴァチカン宮殿にあるフレスコ画です。モチーフは古代ギリシャ哲学者たち。中央左側でオレンジの服着て天井を指差してるのは哲学者プラトン。これ、モデルはダヴィンチです。
ダヴィンチ作「ヨハネの洗礼」。男色家疑惑のあったダビンチが弟子の中で一番可愛がっていたサライという美青年をモデルにしたそうです。
「イエスの胴体が『長すぎ&バランス悪い』という謎?」について。
基本イエスは神の子なので、赤ちゃんの頃から大人びた体型や顔つきにするのがこの頃のフィレンツェ画家のスタンダードなんです。
これはジャンフーケ作・ムランの聖母子のマリアとイエス。大人びてるし、冷静な目と人差し指で意思表示しています。
これはフィリッポリッピの「聖母子と二天使」。イエスの目や手つきが、もう、子供のレベルじゃないです。
こんな感じで、糸巻きの聖母にはそれほど謎がなかった・・・という話でした。