昭和日本が誇る商業デザイン「看板建築」と建替えリノベーションの波
数億円スーパーカーとレプリカカー
98年型マクラーレンがサザビーズの競売で15億円以上の落札価格がつく予想というのがニュースになっています。
きっと、同年式のスープラやGTRのほうが早いし故障ないし、スーパーカーっぽさならNSXだっていけてるじゃん(マクラーレンホンダじゃん)?と思います。
昔、スーパーカーのレプリカが大流行した時期があります。
フォードやポンティアックをベース車に、ランボルギーニカウンタックやフェラーリF40そっくりの外装に大改造して、売る、という。エンジン音以外はそっくり。
現在、「日本の車メーカー」に格上げされた「光岡自動車」は、田舎の「中古車屋」からレプリカカー制作販売で成り上がりました。
今のビュート(日産マーチベース)とかは、ふつうに可愛くてオリジナル車ですね。購入オーナーにリフォームプランを提案してる車愛に溢れる会社です。
最近は、レプリカ車も減りましたが、ポルシェ356とかランボルギーニミウラ・イオタなど超クラシックカーは現物がない分、フェイクカーが人気です。
建築の世界のレプリカ=看板建築
この東京の三省堂書店の建物は「看板建築」の代表格として、文化財になってます。
Wikipediaには文学的に書いてありますが、看板建築は、一言でいえば「レプリカカーの住宅版」。
一戸建ての和風住宅兼店舗の、公道に面した部分をドラマのセットみたいに洋風の高級建築にしたハリボテ建物です。
また、2階建てが主だった頃に、表通り面だけ2階の窓を「床すれすれの低い窓(2階の窓1)と天井より高い位置の窓(2階の窓2)」に分け、結果的に3階建てに見えるようにした看板建築もあります。
贅の限りを尽くしたハリボテ建築物
こう書くと安っぽく感じます。でも、看板建築の建物は、貧乏ったらしい見栄からではなく、「あきんどのシャレと記憶に残すための店舗デザイン」として考え抜かれて建てられました。
関東大震災の復興時期、個人商店主さんが周囲の住民を元気づけるため建てた面白建築ともいえます。
その証拠に看板建築には、金を掛けなければできない、銅版葺きの壁を店のコンセプトごとに檜垣・亀甲・網代・青梅波・麻の葉などの格子模様に織り込んで作っていたりします。
普通の和風建築の外装の何倍も金をかけてます。金をかけ、さらに楽しんでるのが看板建築です。
もしかして、純粋にブロックを組んだ洋風建築物を建てたほうが安上がりなところを、木造モルタルとタイル仕上げなのに洋風に見えるように擬石造りと絡めたり。
普通の一戸建て住宅の1面にハリボテの洋風建物的な大型セットを貼り付ける、マンサード型、パラペット立上り型、また念を入れて表通りと側面の3面にハリボテするパラペット折り曲げ型などの看板建築様式があります。
看板建築はリノベーションせずに文化財として残そう!
残念なのは。日本中の看板建築物が、今やとっくに消費期限切れで、続々と建替えやリノベーションによって消滅しているという現状です。
看板建築は、表面は洋風でも中身は築50年の老朽化した築古建物で、風呂なんかもプロパンの追い炊きのボロっちいやつです。また、繁華街にあることも多く。建物自体が借地権建物だったりして、借地更新期間のハザマを迎えています。
なので、所有者さんや借地権者さんがリタイヤして更地にして売却したり、隣の土地所有者さんと示し合わせてマンション建築をはじめたり。
横浜市内のB級商店街もカワイイ看板建築物がどんどんリノベーションされてます。
アールデコ調、洋風建物の本屋さんやギリシャ建築風の八百屋さん。どのみち営業しても儲からないだろうけど、楽しい建物がもったいない。
私の友達が親から相続した店舗建物も看板建築物。
1階テナント、2階が住居、元ラーメン屋だけに洋風銅版葺きなのに雷門(ラーメン食器の『鳴門』模様)が入ったシャレた造り。
だけど、親御さんがなくなってからは使う人なし。看板建築にも空き家問題の影がさしてます。
単なるプレハブやツーバイフォーの築古住宅はともかく、看板建築は、きっと日本ならではのアーキテクト。