建替え診断室

建替えか?リノベーション・リフォームか?神奈川~東京の中古住宅・査定事例を紹介!

湯河原駅~中古マンションと「都会田舎」な湯河原温泉の介護リゾート

湯河原駅

湯河原町に、買取依頼のあった物件査定のため電車で行ってきました。

東海道本線湯河原駅の改札を出ると、駅前ロータリー周囲に2~3件のお土産屋さん(この辺は小田原蒲鉾の生産地)があり、改札を背にしたロータリー右側に一軒の昭和レトロな喫茶店があります。

ここで物件の売主さんと待ち合わせていました。

湯河原駅は、春の湯河原梅林や桜の花見、夏の海水浴客では賑わいます。しかし、冬は温泉旅行客も少なくサーファー達は吉浜海岸にクルマで行くので、湯河原駅は閑散としていました。
【湯河原日帰り温泉デート】なんて楽しみかたもあるようですが、ランチできるところは駅周辺では喫茶店とデニーズ以外なさそうで、カップルはどこで「観光地ならではのランチ」するんだろうと不思議に思いました。
ちなみに湯河原の観光地域は、湯河原駅東海道線の線路を境にした海側に多くあり、山側は住宅街や高級別荘地域です。

舛添要一東京都知事が公用車で家族と一緒に毎週遊びにきてたのに「いや、別荘レジャーじゃなく公務としてきてたんだ!」と詭弁を弄して、失脚の原因となった別荘も湯河原駅から山側の湯河原町宮上という別荘地にあります。
宮上は真鶴~湯河原~熱海までの相模湾オーシャンビューが一望できる高台で、舛添氏の別荘(所有権は妻が代表を務めるMIPE社/舛添政治経済研究所)も豪邸として宮上の一角に佇んでいます。

湯河原の中古マンション

買取依頼のあったのは、湯河原駅から向かって海側地域に建つ中古マンションでした。
駅前のロータリーを挟んで左右に道がわかれ、左側をいくと町役場や図書館等があるそこそこ拓けた地域です。
右側の道は小田急のスーパー以外は寂れた感じ。
私は徒歩で迎えにきた売主さんとその方角をトボトボ歩いて、対象の中古マンションに向かいました。

売主さん自身は都内に住み、湯河原の中古マンションは相続して空き家化していました。

中古マンション自体は問題なかったものの、隣地や周囲に水産加工場が沢山あり(苦手な人が多い)加工魚の蒸した臭いが一帯にたちこめていました。
その地域の建物や電柱は水産で成り立つ漁村特有の潮焼けが目立ち、道路は加工場からの排水による水溜りができていました。
中古マンション本体は良くても周囲のロケーションが悪く、地元の人間でなければ使いようがないので、買取は辞退させてもらいました。

ところで、周囲にも分譲であろう中古マンションの他に、新しくてキレイな【リゾートマンション】のような建物を、歩いている最中、いくつか見かけました。
そのリゾート風なマンションが気になったので、売主さんと湯河原駅でお別れした後、電車に乗らずに駅付近を散策してみました。

リゾートマンション風建物の正体

リゾートマンション風の建物が気になったのは、【リゾート地・別荘地としてはブームが過ぎ去った湯河原町】に、なぜ今、新しい物件が建ってるんだ?――と不思議に思ったからです。

その建物の自動ドアを入ってみると疑問は解決しました。そこは大手介護業者が建てた、入居型の介護施設でした。
受付にいた介護士さんに、失礼ながらも色々と世間話をして勉強しました。
聞いたところ、湯河原町はここ10年ほどで介護業者が多数参入してきたそうです。

湯河原町に介護業者が集まった理由は、湯河原町は神奈川県内トップの高齢化自治体であり、かつ東京から最もアクセスのいい温泉観光地として知られているため、終の棲家として湯河原の介護施設を選ぶお年寄りが多いからだそうです。
温泉付き介護施設として人気過ぎて、湯河原町を地元とする介護士さんの数が足りないため、都内からの人材派遣の人海戦術で戦える大手業者が強いようです。

査定にいった中古マンションに限らず、湯河原は、【空き家=湯河原】という認識が不動産業界で通用するほど空き家率が高く、神奈川県内でも一番の空き家の多い市町村です。
介護士さんのいう、「湯河原町の高齢化」もうすうす知っていたため、この日の中古マンションの買取にも慎重になったわけです。

吉浜海岸とマンション価格

足柄下郡湯河原町真鶴町は、神奈川県の湘南・西湘地域の南端で、静岡県函南町熱海市と隣接する、とても温暖な地域です。

湯河原・熱海は「湯の河原、熱の海」という地名で分るとおり、国内屈指の温泉地で、地熱により冬でも温暖です。
そして、熱海の海は波がないけど、湯河原の吉浜海岸は波も高いので冬の人気のサーフィンスポットになっています。
湘南のサーファーは湘南の海で遊ぶけど、静岡東部のサーファーは冬場は地元よりも温かい吉浜海岸にやってきます。
吉浜海岸にくるのは交通アクセスの良さもあるけど、相模湾沿いの海岸は湘南から湯河原まで、静岡よりもだんぜん温かいからだそうです。
実際に、昔、吉浜にサーフィンに行ったり、小田原で釣りをした時、都内は極寒だったのに、相模湾の海は強い日射しで防寒ウェアが暑苦しかったほどです。

そんな温暖なシーサイドリゾートである湯河原の中古マンション・リゾートマンションの価格相場は、想像する以上に【超・格安】です。

都会田舎リゾートマンション

相模湾のオーシャンビューの臨める風光明媚な【都会田舎=〝とかいなか〟】として、湯河原にはリゾートマンションがバンバン建てられました。
そのバブルの名残りの中古物件が、戸建て空き家に劣らぬ数、湯河原町にはゴロゴロあり、売り手過多なので、相場が下落する一方なのです。

これは、湯河原に限らず、スキー場やマリンリゾート系のリゾートマンションの現状です。
そして、これらリゾート物件には、【格安リゾートマンション管理費=超・割高】という、落とし穴がついてきます。

裁判所の競売で1円から落札できるリゾートマンションには、たいてい【滞納した数百万の負債支払い義務】がくっついてきます。
そして、その負債がついていないリゾートマンションも、購入した後、所有者なのに家賃みたいに高額な「月々の管理費」の支払い義務があります。
湯河原や熱海など温泉地のリゾートマンションは、さらに温泉付きマンションであることが多く、管理費も温泉付きなぶん、余計に高くなります。

管理費が安い月3万円のリゾートマンションを買っても、行くのは年一回がいいところです。
月3万円×12ヶ月は36万円。
同じ、年一回湯河原温泉観光をするのなら、一回に30万円を使って湯河原の老舗温泉旅館に宿泊したほうが贅沢リゾート三昧できるでしょう。

極楽温泉地【終の棲家】としての湯河原

こうした、リゾートバブルの夢の跡も残る、都会田舎・湯河原町の役場では、面白い試みをしています。
ふるさと納税をしてくれた人に湯河原温泉のサービスをプレゼントするというものです。

都会田舎たる湯河原リゾートがふるさと納税で楽しめることが、都民にもっと知れたら、アクセスもいいし、閑散期の観光客増につながるでしょう。
人口を増やすのがいいことかどうかの議論もないまま【移住・人口増】にウェイトを置く自治体政策が多い中、ふるさと納税で観光産業にてこ入れする発想は功を奏するかも知れません。

介護士さんが世間話で言っていた【終の棲家】としての湯河原温泉というのも、これから需要が増しそうな感じです。
いい風呂に入って「極楽、極楽」とつぶやくのは、団塊の世代でも通用する感覚だそうです。
温泉地で人生終いをすることは、忙しいサラリーマン時代を過ごした年寄りが本音で臨むところかもしれません。